酒
Jul 1, 2025
ゲスト
牧野 恵

偶然が生んだ革新は、ワインの世界にも存在する。前回ご好評いただいた「しぇりーさんクラブ」第1弾に続く今回は、“シェリー酒”の真髄にさらに深く迫ります。スペイン・アンダルシアの風土と人々の知恵が生んだ、唯一無二の酒造り。その背景には、自然現象を味方につけた壮大な試行錯誤と発酵文化の美学があった。単なる酒の話にとどまらない、自然と人間の叡智の記録!
ワインに白い膜が張る…それは本来「失敗」とされる現象だった。だがシェリー酒の世界では、それが価値ある味の起点になる。“フロール”と呼ばれる産膜酵母が液面に広がることで酸化から守られ、複雑で芳醇な香りと風味が生まれるのだ。自然の“エラー”を受け入れ、そこから創造性を引き出す柔軟な姿勢こそが、シェリーの進化の鍵。現代人が忘れがちな「偶然の力を活かす発想力」にこそ、豊かなものづくりのヒントが隠れている。

アルバリサと呼ばれる石灰質土壌、灼熱の太陽、海から吹き込む風。そんなアンダルシア特有の自然環境が、シェリー酒の個性を形づくる。そしてその風土と響き合うように発展したのが、“ソレラ・システム”という熟成技法。新旧のワインを少しずつ混ぜるこの方法は、味の安定を生み出すと同時に、「継続すること」の尊さを教えてくれる。伝統と実験、自然と人間の共創がもたらす、多層的な味わいと学びを見逃すな!
一時は時代遅れとされたシェリー酒が、いま再び脚光を浴びている。ソムリエやシェフたちの創造性によって、新たなペアリングが生まれ、若手生産者の自由な発想が、味わいに革新をもたらしているのだ。“伝統”を懐古的に語るのではなく、そこから新しい価値を汲み取る動きが始まっている。私たちは、過去の知恵を未来の道具に変えていけるのか。そんな問いが、シェリー酒の奥に静かに息づいている。

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第1弾に続いて、しぇりーさんの知識と情熱が溢れた第2弾。特に「偶然を受け入れる力」や「土地と対話する視点」に心を打たれました。私たちの仕事や日常もまた、環境との関係性から成り立っているのかもしれません。
『藤井厳喜の2ndチャンネル』で一部、様子がご覧いただけます。
▼【樽の中の劇場】“シェリー”というお酒を知っていますか?
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