漫画サブカル
Dec 1, 2024
藤井 厳喜

猫が人に化けてお店を開く商店街や、水木しげるの描く妖怪たち。その不思議な世界は、縄文から続く「見えないものと共に生きる感覚」を映しています。さらに、南方熊楠の研究や般若心経の思想を重ねると、日本人が昔から大切にしてきた“祖先や霊とのつながり”が浮かび上がります。漫画を通して改めて気づく、日本人の心の原点。この物語が語る縄文の思想を、ぜひ最後まで味わってみてください!
「猫町商店街」では、化け猫たちが人間に姿を変え、商店街でともに暮らしています。そこにあるのは単なる奇想天外な設定ではなく、“異界と現実が隣り合わせにある”という日本人独特の感覚。水木しげるの妖怪漫画とも通じるこの世界観は、縄文以来の「見えない存在と共にある暮らし」を表しています。

般若心経の「すべては空」という虚無的な思想だけでは、多くの人は救われません。しかし日本人はそこに祖先や霊とつながる行事。お盆や彼岸を重ね、死者を身近に感じる形で受け入れました。外来の思想を自分たちの感覚に合うように柔軟に変化させる力こそ、日本文化の強さであり、縄文的精神の延長にあるのです!
博物学者・南方熊楠は、粘菌の研究を通して「生と死の循環」という思想に魅せられました。動いているときに“死んでいるように見え”、繁殖しているときに“生きているように見える”という逆説的な世界観。それはまさに縄文的な「死と生の一体感」を現代に示すものでした。熊楠や水木しげるのような人物は、現代における“縄文の継承者”と言えるでしょう。

化け猫や妖怪に映る「異界との共生」
仏教思想を取り込みながら続く「祖先とのつながり」
南方熊楠に見る「生と死の循環」
漫画を通して浮かび上がるのは、日本人が長い歴史の中で大切にしてきた「見えないものとの共生」でした。化け猫や妖怪の物語は、日常と異界が地続きであるという縄文の感覚を呼び覚まします。さらに、仏教や儒教といった外来の思想を取り込みながらも、日本人は祖先や自然と共にある心を失わなかった。南方熊楠の生涯は、その象徴のように感じられます。普段楽しむ漫画の奥に、日本人の精神文化が息づいていると気づいたとき、私たちの視野は少し広がるかと思います。
国際政治学者。ハーバード大学大学院博士課程修了。日本のマスメディアでは決して報道されない、欧米政府が扱うレベルの政治・経済の動向、そして市民レベルの情報も踏まえて、文化、思想、宗教など多方面から分析し未来を的確に見抜くその予測能力は、内外の専門家から高く評価されている。
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