漫画サブカル
May 10, 2024
ゲスト
藤井 厳喜

5月の空気とともに広がる、日本の風景と暮らしの記憶。白いバラ、藤の花、そして菖蒲湯の香り。移ろう季節のなかで、懐かしさと発見が交差します。国際政治学者・藤井厳喜の地元・小岩の菖蒲園や江戸川の土手、柴又のうなぎ屋まで、下町の息遣いがやさしく描かれる今回のエッセイ。自然や風習を見つめるまなざしに、どこか心がほぐれるような読後感が残ります。穏やかだけど、ちょっと沁みる。そんな春から初夏への散歩、見逃すな!
5月の初夏の陽気とともに語られるのは、端午の節句の懐かしい記憶。菖蒲湯や柏餅、金太郎の人形など、昔ながらの風習が思い出とともに立ち上がります。季節の変化に気づく感性が描かれるなかで、藤の花や葉桜、やがて咲く菖蒲が語るのは、日本の自然と寄り添う暮らしの美しさ。短い春を惜しみつつ、初夏の訪れを感じるこの季節にぴったりのひととき。ふと、自分の思い出にも重ねたくなります。

話は小岩の菖蒲園や江戸川の土手に広がり、地元の風景と人々の記憶が鮮やかによみがえります。百姓が作った菖蒲園、中学生時代の土手でのマラソン大会、ぺぺ桜井さんとのご縁、そして昔ながらの柴又の鰻屋まで飾らない語り口に、誰もが心のどこかにある「自分の町」の記憶を重ねたくなるはず。東京下町の知られざる魅力が、温かなまなざしで綴られます。観光ガイドには載らない“地元の宝”をお見逃しなく。

最後に登場するのは、日本の暦「七十二候」や俳句を通じた自然の捉え方。藤から紫陽花へ葉の手触りや色彩にまで注がれる細やかな視点は、四季の変化を五感で楽しむ贅沢を思い出させてくれます。俳句は自然を詠みながら、人の心を映すもの。そんな世界観が、ゆるやかに、でも深く伝わってきます。自然の変化を感じ取ることが、自分を見つめ直すきっかけになるかもしれません。読むだけで、景色の解像度が上がる感覚をぜひ。
「季節は語る、子ども時代の記憶」菖蒲湯や金太郎の人形、柏餅…懐かしい端午の節句と家族の風景。
下町の宝、歩いて見つける小岩の魅力」小岩の菖蒲園、江戸川の土手、そして柴又へ。地元目線の街案内。
「自然と心をつなぐ、七十二候の楽しみ方」藤の花から紫陽花へ。俳句に込められた“季節と人の心”の重なり。
季節の話に、地元の風景や思い出が重なると、時間がゆっくり流れる気がします。暮らしのなかにある「小さな風景」にこそ、豊かさが詰まっているのかもしれません。忙しい日々でも、ほんの少しだけ目を留めてみたくなる。そんな気持ちになる文章でした。
国際政治学者。ハーバード大学大学院博士課程修了。日本のマスメディアでは決して報道されない、欧米政府が扱うレベルの政治・経済の動向、そして市民レベルの情報も踏まえて、文化、思想、宗教など多方面から分析し未来を的確に見抜くその予測能力は、内外の専門家から高く評価されている。
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