縄文の記憶が鳴る

縄文の記憶が鳴る

津軽三味線がつなぐ“日本の原音”

津軽三味線がつなぐ“日本の原音”

音楽

Oct 31, 2025

ゲスト

小山 豊

津軽三味線の“地の音”をさらに掘り下げる後編では、合理よりも“余白”を選ぶ日本の感性に焦点を当てます。津軽三味線小山流三代目家元・小山豊さんが語るのは、出せない音を楽しみ、揺らぎを美とする演奏哲学。縄文を想わせる土の鼓動は、教会音楽や中東の旋法とも自然に響き合い、いまはアニメやゲームの現場にも息づいている。伝統を“守るだけ”から“生かして使う”へ。この現在地を確かめる旅、最後まで見逃すな!

1.“出せない音”を楽しむ、余白の美学

1.“出せない音”を楽しむ、余白の美学

三味線は「弦は三本でいい」「無理をしない」という制約をあえて受け入れます。雅楽にならい、皆で同時に鳴らさず、自然界のような微妙な“揺らぎ”を美とする姿勢が核です。開放弦のアンニュイを響かせ、ギター的に“弾けてしまう”領域には踏み込まない。手段を絞ることで、音の必然だけが立ち上がるのです。結果として、音と沈黙のあいだに広がる“余白”が、聴く者の想像力を呼び覚まします!

2.縄文から世界へ“地の音楽”の普遍性

2.縄文から世界へ“地の音楽”の普遍性

小山さんの津軽三味線には、土と風と人の記憶が脈打っています。縄文の造形に響く“生命のリズム”は、ケルトや中東の旋法、さらにはバロックの装飾法とも自然に共鳴し、国境や宗教を横断して感覚の共通基盤を呼び覚まします。これは単なる日本の伝統音楽ではなく、人類が古来共有してきた自然観と祈りの態度を映す鏡です。津軽で生まれた音が、遠い文化圏でさえ「懐かしさ」を喚起するのは、その根に人間普遍の時間が流れているからにほかなりません。

3伝統を“守る”から“生かす”へ「未来への継承」

3伝統を“守る”から“生かす”へ「未来への継承」

小山さんがめざすのは、古典の精密再現ではなく“文脈の更新”。アニメ『鬼滅の刃』やゲーム『Ghost of Tsushima』『原神』に息づく三味線の音は、過去の遺産を現代の感性の中で機能させる試みの成果であり、音が触れる接点を生活の場へと拡張しています。さらに学校や地域での演奏・ワークショップを通じ、子どもたちが自然に和の音に触れる導線を育てています。伝統はガラスケースに入れる標本ではなく、使って育てる道具。その思想が、静かにしかし確実に未来を拓いているのです!

内容紹介

内容紹介

  1. 「引き継ぐ地面の芸能」出ない音を楽しむ…

    三代目小山流家元が求める津軽三味線らしさとは?


  2. 三味線を使った世界の民族音楽


  3. 「津軽三味線の発展性」 

    なぜ、三味線で色々な地域の音楽を表現することができるのか?


  4. 東京音頭


  5. 「新・東京音頭」

    小山豊さんの伴奏に合わせて、藤井厳喜が自ら作詞した“新・東京音頭”を披露!

編集後記

編集後記

小山さんの語る“音の哲学”には、現代人が忘れかけた「不完全を楽しむ心」がありました。何でも自由に、合理的に表現できる時代だからこそ、あえて制約を受け入れ、その中で美を見出す姿勢に、人としての強さと優しさを感じます。また、縄文の記憶と共鳴する津軽三味線の音は、文明が進化しても変わらない「人間らしさ」を思い出させてくれました。音とは、土地の記憶であり、心の証でもある。子どもたちの耳に、アニメやゲームを通じてその音が自然に届く今。 それは、伝統が新しい命を得た証です。三味線の音が、これからの時代を“つなぐ音”になることを、強く願っています。

 

プロフィール

プロフィール

小山 豊

小山 豊

津軽三味線小山流三代目家元

津軽三味線小山流三代目家元

津軽三味線では、日本最大流派である小山流三代目家元。幼少より津軽三味線小山流宗家(祖父)小山貢翁に師事。 国内はもちろん海外30ヵ国以上で演奏活動を行ない、自身が結成した津軽三味線ユニットはニューヨークでのコンサートを成功。

古典以外にもさまざまなコラボレーションを行い、大人気映画「鬼滅の刃」において三味線の音を収録。津軽三味線や民謡をはじめとする和の文化を日常に戻すべく、伝統の継承と柔軟な解釈で新たな楽曲を生み出し続けています。