ハロウィンに蘇る

ハロウィンに蘇る

「多神教の記憶」

「多神教の記憶」

その他

Oct 1, 2023

藤井 厳喜

ハロウィン。それは一見、子どもたちの仮装パーティに見えて、実は“信仰の記憶”が息づく行事。キリスト教世界の中にありながら、そこにはキリスト教以前の「多神教的感性」が今も静かに流れています。本編では、ヨーロッパの古層に残るアニミズムや魔女伝承を手がかりに、「自然や精霊と共に生きる感性」を紐解きます。さらに日本へ視点を移し、縄文時代から続く“森と神”への祈り、そして現代にも通じるアニミズム的世界観を考察。ハロウィンから縄文、そして現代日本の信仰まで。時代と文化を超えて、人間の心が求めてきた「見えないものへの敬意」とは何か?

1.ハロウィンに宿る“多神教の記憶”

1.ハロウィンに宿る“多神教の記憶”

子どもたちが楽しむハロウィンには、キリスト教以前のヨーロッパが抱いていた「多神教の精神」が脈々と息づいています。妖怪や魔女の登場は、かつて自然や精霊を敬っていた時代の象徴。魔女狩りの背景には、伝統的な薬草学やハーブ文化が“異端”とされた歴史がありました。この視点から見ると、ハロウィンは単なるお祭りではなく、“忘れられた信仰の記憶”を現代に伝える儀式ともいえるでしょう。非キリスト教的でありながら、人間が本来持っていた「自然との共存」を思い出させる祭りです。

2.日本人の中に生きる“縄文の神々”

2.日本人の中に生きる“縄文の神々”

話は日本。縄文から続くアニミズムの世界へ。

日本では、山川草木に仏性が宿ると考え、石や木に魂を感じる「八百万の神」の信仰が今も息づいています。鎮守の森を守った南方熊楠の思想に見られるように、森や木は単なる資源ではなく「命の循環の象徴」この自然観は、仏教や儒教さえも“先祖崇拝”として取り込み、日本独自の宗教観を形成してきました。古代から続く「見えない存在への畏敬」は、エコロジーの原点でもあり、人間が自然の一部として生きる道を示唆しています。

3.縄文とケルト“感性”でつながる文明

3.縄文とケルト“感性”でつながる文明

ヨーロッパのケルト文化と日本の縄文文化には、驚くほどの共通点が存在。

ストーンヘンジの巨石信仰や、ガウディ建築に見られる有機的造形は、縄文火焔式土器の造形美と通じる「自然と調和する芸術」さらに、スコットランドやアイルランドの民謡に共鳴する日本人の感性も、“縄文的世界観”の共鳴といえるでしょう。

現代の「ゆるキャラ」までもが、土地神の新しい姿として語られるなど、縄文的アニミズムは今も形を変えて息づいています。

文化を越えて響き合う“見えないもの”への感受性。そこに、人類共通の精神的遺産が隠されているのです。

内容紹介

内容紹介

  1. ハロウィンに宿る「多神教の記憶」

    “魔女”と“精霊”が語りかける、忘れられた信仰の系譜


  2. 縄文の森に生きる「アニミズムの知恵」

    自然とともに祈る、“八百万の神”の世界観とは?


  3. ケルトと日本が響き合う「感性の文明史」

    見えないものを敬う文化は、なぜ時代を超えるのか?

編集後記

編集後記

ハロウィンの起源を辿る中で改めて感じたのは、「人はどんな時代でも、自然や見えない存在を忘れられない」ということ。

欧州の多神教から日本の縄文信仰まで、人類は常に“共に生きる世界”を描いてきました。

特に印象的だったのは、森や巨石、火焔土器に宿る“祈りの造形”。

それは宗教を超えた普遍的な精神であり、文明が進んだ今こそ必要な「心の羅針盤」かもしれません。

見えないものに敬意を払うこと。そこに、私たちがこれからの時代を生きるヒントがあるのだと深く感じました。

 

プロフィール

プロフィール

藤井 厳喜

藤井 厳喜

国際政治学者。ハーバード大学大学院博士課程修了。日本のマスメディアでは決して報道されない、欧米政府が扱うレベルの政治・経済の動向、そして市民レベルの情報も踏まえて、文化、思想、宗教など多方面から分析し未来を的確に見抜くその予測能力は、内外の専門家から高く評価されている。