ゲスト
金子 大介


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「テーラーに行くと、若い人がいないんですよ」スタイリストの口から出たこの一言が、静かに重い。藤井厳喜がスタイリスト2人と語り合うのは、日本の縫製職人の平均年齢が70歳近くに達しているという現実、そして「日本が安すぎる」という賃金構造の歪みだ。中国にすら逆転された日本の人件費、相続税が中小企業を潰していく構造、その先にあるのはテーラーという伝統技術の断絶だ。後半ではドン・ナチョとドン・フリオ、2種のテキーラを飲み比べながら、アガベという植物が持つ甘さと熟成の妙にも触れていく。職人の技を未来へつなぐために、私たちは何にお金を払うべきなのか。最後まで読めば、次に服を選ぶ基準が変わるはずです!
スタイリスト2人が明かすのは、実際に発注しているテーラー工房の現実だ。手縫いやミシンで仕立てを行う職人の平均年齢はおよそ70歳、若い人材がほとんど入ってこないという。理由は単純で、賃金が低いからだ。安さを求める時代に「この値段でやれ」という売り手優位の発注が続き、職人を支える原価率が削られてきた。スタイリスト側はこの状況に危機感を持ち、適正な価格設定で原価率を上げ、職人に賃金として還元する取り組みを進めている。「いい服を注文することが、技術を次世代に継承させることになる」という言葉には、おしゃれの裏側にある産業構造への理解が滲んでいる。

今や日本の人件費は中国と逆転していると指摘される。脱デフレで景気回復の兆しが見え始めた今こそ、おしゃれにきちんとお金を使うべき時だという話に発展する。インポートブランドは為替の影響で値段が上がる一方、値段が上がってもクオリティが伴うとは限らない。そんな中で改めて注目されているのが日本のものづくりだ。縫製技術はとくに評価が高く、適正な対価を払うことが結果的に経済循環を生む。これは衣服に限らず、日本酒や焼酎造りも含めた「万般」に共通する課題だと語られる。今の世代がここで手を抜けば、「あの世代がだらしなかったから日本の伝統が途絶えた」と言われかねないという危機感が、対談の根底に流れている。
後半は、メキシコの職人が作るテキーラの飲み比べへと移る。ドン・ナチョのアニェホはよく寝かせた40度の口当たりの良い1本、もう1種のドン・フリオ・ウルティマ・レゼルバはエクストラアニェホという最高位の熟成を経た1本だ。寝かせていない透明なブランコは出来立てそのものの色で、熟成が進むほど琥珀色に変わっていく。アガベというアロエに似た植物の根を削って絞った甘い液を発酵させて作るのがテキーラの本質だが、長期熟成のものはテキーラ特有の青臭さが消え、ウイスキーに近い練れた味わいになるという。日本の焼酎もいずれ熟成方式が確立されれば、ニューヨークのバーで芋焼酎が定番になる日が来るかもしれないという未来への期待も語られた。


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「この値段でやれ」が壊した日本の縫製職人の未来
平均年齢70歳の現場で進む静かな再生の試み
日本の人件費が示すものづくり大国の歪
おしゃれと経済循環の意外な関係テキーラ2種が教える熟成の正体
ドン・ナチョとドン・フリオの飲み比べ

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