雨に濡れる紫陽花に

雨に濡れる紫陽花に

俳人・藤井厳喜の素顔があった

俳人・藤井厳喜の素顔があった

その他

藤井 厳喜

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政治も経済も地政学も、今日はいったん棚に置いておこう。藤井厳喜が辛口シードルを傾けながら語るのは、紫陽花、菖蒲、梅雨の雨音、そして自作の俳句と歌詞の世界だ。「紫陽花の 葉脈深き 真昼かな」「紫陽花は 猫の隠れ家 午後の雨」戦略論者の顔とは全く異なる詩人の言葉が次々と溢れ出す。千葉・松戸の知る人ぞ知る本土寺、江戸川の土手に生まれた菖蒲園の知られざる誕生秘話、幼少期に顕微鏡でカビを観察していたという意外な少年時代まで。梅雨を「第5の季節」と呼ぶ藤井の視点は、憂鬱な季節の見え方を静かに変えてくれる。最後まで読めば、雨の音が少し好きになるはずだ。

1.俳人・藤井厳喜の詩の世界

1.俳人・藤井厳喜の詩の世界

紫陽花と言えば色が変わることが話題になりがちだが、藤井がまず詠んだのは花ではなく葉だった。「手を触れたらペンキで色が指につくんじゃないか」というほど鮮やかな若葉の緑、そして深く刻まれた葉脈。そこに着目した「紫陽花の 葉脈深き 真昼かな」は、誰もが見ているのに誰も詠まなかった視点の句だ。一方、色の変化をあえて逆手に取った「紫陽花の 色定まりて 海荒れる」は、紫陽花と荒れる海という全く関係のない2つの取り合わせが、なぜか人間の決意のようなものを浮かび上がらせる。「紫陽花は 猫の隠れ家 午後の雨」という句には、梅雨の午後の空気がそのまま閉じ込められている。俳句とは、こんなふうに日常の一瞬を永遠にする技術なのだと気づかせてくれる。

2.─七五調の歌詞に込めた、うつろいへの抵抗

2.─七五調の歌詞に込めた、うつろいへの抵抗

藤井が今回特別に朗読したのは、自作の歌詞「なぜアジサイは色変わる」だ。1番から3番まで七五調で書かれたこの詩の核心は、初めの淡い水色こそが本当の紫陽花の色であり、それがやがて変わっていくことへの惜しみと抵抗だ。「初めの淡い淡い色、薄い水色、水の色。あれが本当の紫陽花のただひとつの色なのに」という一節は、色が変わることを人の心のうつろいと重ねて読むことができる。3番の「いっそ見ないで窓閉じる、まぶたも閉じてもう見ない」という締めくくりには、変わってほしくないものが変わっていく時の、どうにもならない感情が凝縮されている。政治論者の顔からは想像しにくい、繊細で女性的な感性がここにある。

3.知る人ぞ知る「紫陽花寺」と土手に生まれた菖蒲園の物語

3.知る人ぞ知る「紫陽花寺」と土手に生まれた菖蒲園の物語

有名な紫陽花寺は混むからこそ、藤井がすすめるのは千葉県松戸市の本土寺だ。日蓮宗の歴史ある寺院で、菖蒲と紫陽花が同じ時期に楽しめるという贅沢な境内は「この世のものとは思えない」ほどの美しさだという。一方、地元・小岩の菖蒲園には微笑ましい誕生秘話がある。子供の頃、地元の農家が江戸川の土手の公有地に勝手に水を引いて菖蒲を育て始め、その方が亡くなった時に江戸川区に引き継がれてできた菖蒲園だという。「業務上横領行為だったんでしょうけど」と笑いながら語る藤井の言葉に、地域の記憶を大切にする温かさが滲む。梅雨を「五季のある日本の特別な季節」と呼ぶ視点は、日本の風土への深い愛着から来ている。

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内容紹介

内容紹介

  1. 花じゃなく「葉脈」を詠んだ俳人の眼 

    なぜ花より葉を選んだのか?その着眼点の正体


  2. 自作歌詞「なぜアジサイは色変わる」

    七五調に込めた、うつろいへの惜しみと抵抗


  3. 地図に載らない紫陽花寺と、農家が勝手に作った菖蒲園

    梅雨を「第5の季節」と呼ぶ男が愛した2つの場所

編集後記

編集後記

政治・経済を語る時の鋭さとは全く違う藤井先生の顔が、この回には詰まっていました。「紫陽花の 葉脈深き 真昼かな」という句は、花ではなく葉を詠んだという着眼点だけで、俳句の面白さを改めて教えてもらった気がします。幼少期に顕微鏡でカビを育てて観察していたというエピソードには思わず笑いましたが、「見ようによっては綺麗なもの」という視点は、今の藤井先生の物事の見方の原点なのかもしれないと感じました。梅雨が「第5の季節」だという言葉は、今年の梅雨が来たら思い出しそうです。辛口シードルを飲みながらこんな詩を朗読するというのが、藤井先生らしい贅沢な時間だと思いました。

 

プロフィール

プロフィール

藤井 厳喜

藤井 厳喜

国際政治学者

国際政治学者

国際政治学者。ハーバード大学大学院博士課程修了。日本のマスメディアでは決して報道されない、欧米政府が扱うレベルの政治・経済の動向、そして市民レベルの情報も踏まえて、文化、思想、宗教など多方面から分析し未来を的確に見抜くその予測能力は、内外の専門家から高く評価されている。

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