酒
Dec 1, 2024
藤井 厳喜

冬になると、なぜ人は“湯気の立つ酒”に心を寄せるのでしょうか。今回は、藤井厳喜が語る「焼酎・テキーラ・ウイスキーのお湯割り」をテーマに、ただの飲み方講座ではなく、ぬくもりと文化と人の物語が溶け合う時間を届けます。お湯ファーストの理由、香りの立ち上がり、クローブがもたらす癒し、そして下町で育まれた酒の景色。お湯割りは、単なる割り方ではなく、人と酒が向き合う作法でした。「仕事終わりの一杯」がなぜあれほど沁みるのか。酒場の立ち飲み文化に宿る幸福とは何か。冬の夜を少しだけ豊かにする、藤井の酒哲学に耳を傾けてください!
焼酎のお湯割りは、必ず“お湯を先に”入れること。藤井は「味覚にはそれほど自信がない私でも、一発で分かる」と語ります。焼酎の上にお湯を注ぐと、液体が均一に混ざらず、香りが立ち上がらない。しかし、お湯へ焼酎を注ぐと、ふわりと香りが広がる。とくに熊本の米焼酎「朝霧の花」は甘い香りが際立ち、温度に包まれて豊かな表情を見せる。この細やかな違いこそ、ただ飲むだけでは出会えない“酒の奥行き”。冬の寒さをほどくように、香りは湯気とともに立ち上がり、身体の芯まで染み渡る。

「テキーラは夏の酒」という常識を覆すのが、お湯割り×ライム×クローブの組み合わせ。薬草のような香りが立ち上がり、胃腸にも優しい。その感覚は、イギリスのホットウイスキーにも通じ、冬の体をゆっくり解いていく。さらに梅干し割りの焼酎、スモーキーなクリネリッシュ、長期熟成の「雪」など、銘柄ごとに“温度によって開く表情”がある。風味は湯気の中で変化し、飲み手の時間までも穏やかに変えていく。酒はただ酔うための道具ではなく、人生の緊張をほどく小さな儀式なのだ。
藤井は酒場の記憶を語る。立ち飲み屋で、焼酎とビールの“爆弾”を静かに楽しむ職人。角打ちで缶詰をつまみに働き終えた身体を労うサラリーマン。そこにあるのは、酔うためではなく「生きるための余白」。禁止が人間を豊かにすることはない。タバコの煙にすら“ほっとする風景”がある。酒は文化であり、労働する人間への勲章であり、リセットの時間。アルコール・ニコチン・カフェインは、人類が古来から共に歩んできた“許容された薬物”でもある。酒を愛するとは、人間を愛することなのかもしれない。

“お湯ファースト”が変える世界
日本人だけが知っている、冬の酒を美しくする作法とは?
テキーラは冬にこそ輝く酒
夏のイメージを覆す“癒しのホットテキーラ”の魔法
湯気に宿る“働く人間の幸福”
お湯割りが教えてくれる酒場の哲学と人の温度
湯気とともに立ち上がる香りは、味以上に“時間の記憶”を呼び起こします。寒い夜に手をかざして、湯気ごと吸い込んだ瞬間、なぜか胸の奥が少しほどけていく。冬のお湯割りには、人の背中をそっと押す優しさがあります。酒は強さを誇る道具でも、忘れるための麻酔でもない。働いた身体に「今日もよく生きたな」と言ってあげる、ささやかな儀式なのだと思います。禁止や正しさだけでは、人は前を向けない。ほんの一杯の温度が、心をあたたかく整えてくれる。だからこそ、酒場の灯は消えてはいけないのだと、あらためて感じました。
国際政治学者。ハーバード大学大学院博士課程修了。日本のマスメディアでは決して報道されない、欧米政府が扱うレベルの政治・経済の動向、そして市民レベルの情報も踏まえて、文化、思想、宗教など多方面から分析し未来を的確に見抜くその予測能力は、内外の専門家から高く評価されている。
\ すでに購読さている方はコチラ /



